「いえ、ただ逃げるのではありません。勝つために逃げるのです。今は恥を忍び、次は必勝を狙うべきです。奇襲の決死隊には、是非この私をお使い下さい。千でも百でも多くの兵を引き寄せてご覧にいれましょうぞ。」
諸将はただ立ち上がった呂布を見上げ、恐怖の余り後ずさりするだけだったが、張遼は唯一人、胸を張って気丈に答え、跪いて命を待った。呂布はしばらく考え込んだが、やがて自分を落ち着かせるように再び椅子に腰掛け、目を瞑って答えた。
「よし、文遠は五百人の奇襲隊を選び、駿馬と共に今夜半、敵の虚を突け。他の者は、俺と共に文遠が出た反対の門より、全兵力で囲いを突破する。以上だ。」
意を汲み取った諸将は、覚悟を決めたとばかりに大声を上げ、その命に応え解散していった。