「文遠、ご苦労であった。」

 「いえ、将軍こそよくぞご無事で。」

 東へ向かう道すがら、呂布と張遼はようやく再会を果たした。張遼が決死の覚悟で募った五百人の兵は、合流した頃には百人に満たなかった。

 「殉職した我が兵に、何卒報いの言葉を。」

 張遼は座してなお頭を下げ、自らの将にそう願った。

 「いや、その必要はあるまい。漢として生まれたからには戦場で戦って死ぬ事こそ生来の願望。それが叶ったのだから、これ以上の喜びはなかろう。」

 呂布はそう言って馬に跨ぎ、頭を上げようとしない張遼を振り返る事もなく、また東へ向かって、馬を走らせ始めた。

 「張将軍、これでは死んでいった仲間が浮かばれませぬ。」


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