一人の兵が涙を流しながら、頭を上げない張遼に向かってそう訴えた。しかし兵は、額を地面に付けたまま、自分以上の涙を流す張遼の姿に驚き、それ以上の言葉を出す事は出来なかった。

 「漢とは…漢とは、死ぬ為に生きるのか?否、生き抜くために我は闘う。残念だが、呂将軍はこの徐州が最期の地となろう。我らは生き抜くための最善の方法を模索しようぞ。」

 それでも頭を上げようとしない張遼の、反旗とも思えるその発言に、誰も反論する者はなく、ただそこにいる兵のすすり泣く声と、遠ざかっていく自軍の蹄の音だけが辺りに響いていた。

 

第二章 完


あとがき