「これは妙策だ。町自体を溺れさせるとな。面白い策だ。わしの撤退策などすぐに却下だ。子考と子廉は沂水、妙才は泗水に向かい、郭嘉の指示を仰げ。以降、郭嘉の指示はわしの指示と思え。」
曹操の決断の早さに皆面食らったが、一様に大きな声で返事をすると、持ち場に戻ろうと立ち上がった。
「お待ちを!」
彼らの動きをたった一言で止めたのは、またしても劉備であった。劉備も立ち上がってはいたが、それは帰り支度ではなく、解散しようとする彼らを止めるためのものであった。
「呂布をさらに追い込む方法は分かりました。しかし、敵は一騎当千の猛将。誰が最終的に奴を追い込むのでしょうか?」
その言葉にまた曹操を初め、諸将は黙り込み、中にはまた座る者もいた。それだけ呂布という男が無類の強さを誇り、誰をも寄せ付けない猛将であることをここにいる皆は知っていたのだ。曹操は居並ぶ武官達の顔を順に眺めたが、呂布を生け捕る、生け捕れなくても瀕死の重傷を負わすだけの威勢を放つ者は、誰もいなかった。
「どうかその大役、我が軍のこの関羽に…」