「またあんたか…。この前の約束は守ってくれてるだろうな?」
男はゆっくりと障害のなくなった前へ歩きながら、彼もまた関羽から目を離す事無く、笑いながら言った。
「案ずるな。一旦安全な場所に移してある。二人とも元気だ。出来ればお主とはもう関わって欲しくないがな。」
関羽は皮肉混じりにそう返した。その言葉を鼻で笑いながら、趙神は曹操の方へ向いた。しかし、曹操の姿は殆ど見えなかった。彼の前に大きな男が仁王立ちしていたからだ。
「俺はお前と話に来た訳じゃないんだがな。」
趙神は大男の顔を見て、さらに妖しい笑顔を見せながら彼に向かってそう吐き捨てた。大人が二人は入ろうかという大きな腹は一度見た者は絶対忘れないであろうと思われた。その腹から太い幹が五本出るかのように、考えられないほど太い手・足・首が生えていた。顔は決して恐い顔ではなく、そんな体でなければ、恐らく優しそうに映るであろう無垢な顔をしていたが、彼の持つ痩せた人間と同じくらいの太さの鉄の棍棒が、そんな想像を軽く打ち消していた。