「虎痴よ、大丈夫だ。下がれ。」
曹操のその言葉を聞き、大男はためらう事もなく素直に元居た曹操の左斜め後ろに下がった。
「して、まずは名前を聞こうか。」
曹操は落ち着いた表情で趙神に話掛けた。目の前に立つ青年が、どうやって屈強な数百人の兵士達の制止を振り切りここまで来たのか気にはなったが、動揺するのは自分のあるべき姿ではない事を彼は知っていた。
「趙快慈。名は神。お前達の強力な助っ人だ。」
神をも恐れぬ様なその態度に、楽進ならずとも皆が殺意を感じずには居られなかった。ここが曹操の目前でなければ、恐らく斬り掛かって行く者も少なくなかったであろう。
「ほう。我が軍の味方をな。で、具体的に何をしてくれる?」
「呂布を捕らえよう。」
曹操は命知らずで無鉄砲な目の前の若者に言い知れぬ興味を覚えたが、思いもよらない趙神の答えに高笑いに続いて、また話し始めた。
「呂布を捕らえるとな?それはいい。しかし奴は向かうところ敵なしの猛将、どうやって捕らえるつもりだ。」