「では、お前に明後日一日をやろう。ただし一つ条件がある。もしも奴に勝てなかった場合、わしに命を預けて仕えよ。その約束が出来るならば、明後日はお主ら二人の戦いを見守るとしよう。」
「分かった。その言葉、忘れるなよ。」
趙神は間髪を入れずにそう答え、そのまま来た道を戻っていった。曹操はあっさりと条件を飲んだ青年に驚いたが、余程自信があるのだろうと頼もしく思い、さらにあの青年を欲する自分に気が付いた。諸将は怒りに震えながらも、曹操が決断を下した以上、何もすることが出来ず、ただ背中に飾られた剣を握る素振りも見せない不敵な男を睨みつけるだけであった。入り口を出る趙神は何かを思い出したのか、ふと立ち止まると、もう一度自分を睨みつける諸将達の顔を一人ずつ丁寧に見ていった。全員の顔を確認すると、苦笑いを浮かべてその場を立ち去って行った。
「将軍、どういうつもりですか?あ奴を信用するつもりですか?」
荀攸は訝しげに曹操に尋ねた。曹操は荀攸だけではなく、諸将に向けて再度号令発した。
「とにかく郭嘉の指示に従い、諸将は二つの河へと急げ。奴が勝負をする明後日までに作戦の準備を片付けろ。明後日、奴が勝っても負けても、策は実地する。あわよくばわしは『死神』と『猛虎』の二つを手に入れることが出来るやもしれぬ。」