「それよりも、我々の狙いを知りたいと話していたのではないのですか?」

男は趙神の殺気を受け流すかのように、さらっと話を変え、自分はまるで戦う意思がないとでも言うかの様に一人だけ、焚き火の傍に行き腰を降ろした。その時になって初めて紫音が得物を手に彼の後ろで臨戦態勢に入っていた事に趙神は気が付いた。

「我々『常山隠密衆』は戦乱の世になればなるほど栄えます。幸い、今世の中は混沌を極め、この流れは当分続く事でしょう。戦乱を長引かせる事で、我々はさらに繁栄を得ることが出来るのです。」

「なるほどな。その為に曹操軍に仲間を忍び込ませ、奴らを応援する訳か?」

「大方正解です。しかし我々が送り込んでいるのは曹操軍にだけではありません。各地に送ることで、戦力の均衡を図っています。」

趙神も戦うことを諦め、その場にまた腰を降ろした。趙神は殺気を含んだ視線を、男は軽蔑を含んだ視線をお互いに投げかけ、睨み合ったまま話を進めた。

「親父達や俺達の先祖が、そんな事を望んでいたと本気で思ってるのか?」


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