「…自分の親でもですか?あなたは何も進歩していないようですね。分かりました。覚えておきましょう。」

子竜が振り返ることはもうなかった。虚しい空気が流れる中、漢匠は先程子竜が座っていた場所に腰を降ろし、趙神の方を心配そうに見てみた。明らかに動揺を隠せない様子の彼は、何かを思い悩むかのように、俯いていた。

「お主の言っている事は正しいよ。子竜様も本気で混沌の世を目指している訳ではない。もっと大きな狙いが在るのじゃよ。ただお前と一緒で、お前の前じゃとどうも…。」

「あいつはまだ趙雲の名を使っているのか?」

「もちろんじゃとも。あのお方ほど、本当に一族のことを考えている方はおらぬて。」

「そうか…」

趙神はそう言うとまた横になり、今度は本当に喋らなくなった。

漢匠は趙神、趙雲という二人の兄弟の、避けられない悲劇に言い知れぬ哀しみを感じながら、趙神の寝顔を眺めていた。


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