「そう言えば、言い忘れておったわ。先手を打ったつもりだったのであろうが、やはり武人は武人。お前が声を掛けた曹性も侯成も全てを語り、裏切り者を裁きたいそうだが、どうする?」

陳宮の顔から一気に血の気が引いていったのは、そこにいる誰もがすぐに分かった。呂布は方天画戟から目を離す事無く、勝ち誇ったように座っていたが、全身を震わせて立ちすくむ陳宮を一瞥すると立ち上がり、戟を右手で立て掛け、気合の入った顔つきでそこにいる者たちに語り始めた。

「諸将はそこにいる下衆を連れて、敵に降伏するがよろしい。俺はここで自分の物語の終章を描こう。残る者も去る者も、止める事も誘う事も許さぬ。武人ならば、自分の物語は自分で描こうぞ。」

呂布の言葉を聞き、すぐに侯成、宗憲、魏続が呂布の前に出て跪き、別れの言葉を口にした。

「時代の極悪人、董卓を討ち、我らの武勇で天下に手が届きそうな処まで来ましたのに、志半ばで、断念するのは誠に残念です。今はただ、恥を偲んで生き、将軍の思いを受け継ぎ、武人として天下に覇を唱えます。」

「口先だけのこの小男は私が責任を持って、曹軍に連れて参りましょう。」


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