彼らの言葉に嘘はなく、それは武人である彼らが惜別の涙を流していることからも、良く分かった。彼らに続けと次々に挨拶に来る配下の武将に対し、呂布は一人一人の目をしっかと捉え、ただ頷くだけであった。そこにいる殆どの武将が別れを告げた頃には、陳宮は固く縛られ、数十人の武将達が彼を囲んでいた。

「匹夫が、ただ武だけを頼りに時代を掴もうなど、そもそも無理な話だったのだ。わしはお前を見誤った。お前さえ…」

陳宮が大声で吼えたが、その言葉は途中で、周りを固めた多くの将達によって、暴力と共に掻き消された。

「もう良い。陳公台よ。お前は曹操に負け、この俺にも負けた。お前の物語は敗戦の連続で締められるのだ。」

呂布はそう言って、また座った。各将は改めて深く頭を下げると、陳宮を引っ張り、その場をついに後にした。

呂布は特に落ち込む風でもなく、まるでこの状態を覚悟していたかのように、落ち着いていた。先程まで多くの将兵の緊張感に包まれていた場所は、今はやけに広く感じ、妙に静かであった。


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