「貴様、何者だ。ここに一人で乗り込んでくるとは、曹操の将ではないな。」
呂布は戟を持つ手に力を込め、大声で怒鳴り上げた。高順も槍を漢に向け、隙あらば飛び込もうとしている。彼らの間には、数十歩という距離があった。徐々に近づいてくる漢の顔はまだ確認できない程だったが、それでも臨戦態勢に入らざるを得ないほど、漢に強烈な何かを感じていた。
「お前が飛将軍・呂奉先か?」
「だったら何だ?」
「お前と方天画戟が命を賭けるべき敵は、曹操孟徳ではない。この俺、趙快慈と我が妖刀・不知火だ。」
近づいてきた漢は遠目に感じた姿よりも遥かに細く小さく、その辺りにいる一兵卒と変わりなかった。ただこの場において見せる彼の笑顔は記憶にない程妖しく、名乗りながら背から抜いた剣は見事に青白く光り、不気味にも切っ先から水滴を垂らしていた。
「妖刀…不知火とな?まさか本当に実在していたとは。面白い。我が物語の終章に相応しい闘い方を期待しよう。」