「本当の力は俺もまだ知らない。まだ俺と同等以上の武力を持つ人間と、俺自身が戦った事がないからな。」

「案ずるな。天がひっくり返っても、お前が俺に勝つことは無い。」

「何だと。」

呂布が初めて怒りの心境を顔に出し始めた。人に恐れられることはあっても、勝てないなどと豪語されることは無かった。尤も戦場においてはったりとして使う者もいたが、そういう漢に限って、足が震えていたり、顔面が蒼白になっていたりしたものだ。しかし目の前で対峙するこの男は怯むどころか、それを当たり前のように自信たっぷりに口にした。呂布の自尊心は、激怒しろと彼を奮武させた。

「お前が俺に勝てないのは火を見るより明らかだ。なぜなら、お前の物語は俺との戦いで終わるが、俺の物語はお前との戦いから始まるのだからな。」

「お前の物語だと?」

「そうだ。そもそも、お前は俺の物語のたかが一出演者に過ぎん。」

呂布の怒りは最高潮に達し、ついに雄たけびと共に一段高いその位置から飛び上がり、趙神に襲い掛からんとした、がその時、彼を呼ぶ声に、二人の緊張は一瞬和らいだ。


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