「どうやら、俺もお前も曹操に一杯食わされたみたいだな。」
「お前も?…まぁ良い。場所を変えよう。この街で一番高いのはこの宮殿だ。俺に付いて来い。ここの屋根の上だ。そこで物語の終結を始めようぞ。」
呂布はそう言うとくるりと返り、宮殿の階段に向けて歩き始めた。その威勢は些かも衰える事無く、まさに悟りを開いたかのようであった。
「そうだ…お前にとっては終わりの始まり。しかし俺にとってこの闘いは始まりの終わりだ。」
趙神も小声でそう呟くと、一旦不知火を背に戻し、呂布の後へ続いた。外からは何やら轟音が鳴り響き、それは宮殿へと近づきつつあった。呂布にも趙神にもそれが水の音だということは良く分かっていた。しかし例えそれが自然の力であろうとも、今の彼らの闘う本能を止めるものではなかった。