いよいよ──。
 文鴦の念願叶う事態となった。しかし、それは、あまりにも過酷な戦いの始まりとも言える。
 司馬師が催した叛乱征討軍の陣容は、まさに今、かれが発揮できる総力を結集したものなのであった。
 豫州では──鎮南将軍・諸葛誕が大軍を引具して、安風津より寿春へ進撃。
 青洲からは──征東将軍・胡遵が諸隊を統率して、ショウ、宋の両県へ馳せて遊撃の構え。
 荊州にあっては──刺史・王基が監軍の任を担って、選りすぐりの精鋭を束ねて、南頓の要地を略取せんと行軍。
 総司令たる司馬師は、帥旗をひるがえして、汝陽に本陣を据えた。
 すべての指図は、この汝陽からなされるのであった。


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