六
「何事だ……?」
司馬師は、侍臣を呼んだ。
「はっ──。なにか、北の陣屋で騒動が起こっておる由にございまする」
「騒動とは?」
「見て参りまする」
司馬師は、寝台にふたたび横臥しつつ、何か不吉な予感を拭えずにいた。
と──。
すぐに、先ほどの侍臣が馳せ戻り、
「敵襲にございます!敵は、およそ二千か三千との事にございますが、さして多くはないとのこと……」
「ばかな!」
司馬師は跳ね起きた。
「将軍らは何としたのだ?!むざと敵の夜討ちを看過いたしたのか!」
そのとき、司馬師ののどの奥から、ぐぐっと生暖かいものがせり上がって来た。
次の瞬間には、おびただしい鮮血が、かれの口腔内からぶぶっとあふれた。それなり、司馬師は昏倒して気を失ってしまった。