陛下は初めこそ呆気に取られた風であったが、直ぐにそれと気付いたらしく、特に咎められはしなかった。が、その時である
「うん?其方、男の根が……」
陛下の言葉が私に刺さった。
そう、私の男の根は、ほぼ無いのだ。それが着衣を脱ぐ事を躊躇った理由の一つであったのだが、知られた上は御説明を申し上げるのが賢明であろうと感じた。
私は竹簡を外して脱いだ着衣を纏うと、再び跪いて述べた
「はい。私はかつて広漢の孤児でございまして、黄将軍が広漢に赴任されたおりに拾われました身でございます。その後、黄将軍に育てて頂いたのですが、物心ついた時には既に男の根は失っておりました」
私の答えに、陛下は済まなそうな表情を浮かべられた
「そうか…それは済まぬ事を申したのぅ」
暫くの沈黙が続き、陛下がそれ破る
「それでは竹簡を見せてくれ。…ところで、体に巻き付けて来たのも公衡の指示か?」
私は竹簡を陛下に手渡しつつ答える
「いえ、私の考えです」
「ははは、中々の機転であるぞ」
陛下は微笑んでそう云うと、竹簡を広げて読み始めた。
「公衡…済まぬ…」
肩を震わせてそう呟く陛下の姿は、明らかに感情が動いている証しである。果たして、読み終えて顔を上げた陛下の目からは、涙が溢れていた。