「そうです。その自尊心が虚栄であるなら、今はその時ではありません。でも…今が本当にその自尊心を守るべき時なら、勇気を見せるべきでしょう。」
下からの怒声は徐々に諦めの声から、罵声に変わりつつあった。
「趙さんも同じ立場でしょ?趙さんにとっての『今』はその時なの?」
その問い掛けに青年は何かを思い出した様に、また青ざめた表情に戻り、下を見下ろした。
「いや…私にとっての『今』はその時ではないでしょう…きっと…」
戒も青年が見下ろす先を思い切って覗いてみた。遥か彼方に藁が見えるが、とても自分が五体満足で降りられる様な高さではないと改めて感じた。天からの声が聞こえたのはそんな時だった。
「コラッ!ここには来たら駄目だって言ってあるでしょ!」