広間や居間とは言い難い小さな小部屋に戒と青年は正座していた。二人共肩を落とし、正座した状態で下を向いている。正面では蘭が同じく正座して二人に延々と説教をしている。もうどのくらいこの状態が続いているのだろうか?時折彼女が投げかける問いに二人が答えないのは、反省しているからではなく、聞いていないからであることに蘭はまだ気が付いていない。

 「…とにかく!もう絶対に勝手に城の外に出ちゃ駄目!戒だけならまだしも、趙さんが付いていながら…」

 彼女の話がまた振り出しに戻ろうとしていた頃、下の階から彼女を呼ぶ声が聞こえた。二人は何故かこれには頭を上げて気付き、彼女の方を希望の眼差しで見た。蘭はそこで初めて自分の話が二人の耳にまったく入っていなかった事に気が付き、「ふぅー」とため息を吐くと、すくっと立ち上がる。


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