紅蓮の炎はまるで生きているかのように華やかな都だった洛陽の中央にある宮殿から、全てを飲み干さんばかりの勢いで、四方に散らばっていった。趙神は何かを探すが如く、周りを警戒しながら城の南側にある王里の宿屋から宮殿のあった方向に向かって走っていた。至る所で略奪や強姦が行われ、さながら弱肉強食の地獄絵図を見る様であった。しかし、趙神はそれを憂うどころか、逆に一層の笑顔を浮かべて、それらを素通りしていった。中には直接趙神に向かって助けを求める声も聞かれたが、趙神にはまるで耳に入らず、一心不乱に何かを探していた。そんな彼の足がぱたっと止まったのは宿屋から五分程走ったところにある南側屯所の前だった。

 趙神は屯所の門をこれまでとは打って変わって慎重に潜ると思ったよりも広い屯所の庭に十数人の屈強な兵士達が三人の少女達を囲み、今にも飛び掛らんとしていた。その奥、屯所の玄関の傍に置かれてある腰掛には、一際豪華な鎧を身に纏った、他の兵士よりも少し体の大きい男が足を組み、酒樽を片手に少女達を物色していた。


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