「将軍、どの娘にされやすか?」
薄気味悪い笑い声と共に兵士の一人がその男に声を掛けた。少女達は恐怖に震え、発狂寸前に追い込まれている様だ。将軍と呼ばれた男はその中の一人、真中の一番艶やかな衣装を纏った少女を指差した。それに呼応するように、他の兵士達は両側の少女達に喰らい付くように群がった。隠れるわけでもなく、堂々とそこに近づいてくる趙神の存在に気が付いたのは、先程将軍の意見を確認したあの兵士だった。
「何だ?お前は?」
兵士は首を傾げながら趙神に向かってそう聞いた。趙神はそこでようやく立ち止まり、兵士の問いに答えるつもりもないらしく、その向こう…将軍に向かって語りかけた。
「得物を取れ。」
趙神は不気味に笑い、背中の錆びた剣を右手で抜いた。その剣を見た他の兵士から失笑が湧き上がる。子供を相手に罵声を飛ばすような仕草で、明らかに目の前の不敵な若者を馬鹿にしていた。