「そうか…死にたいのなら望みを叶えてやろう。覚えておけ、お前達が最期に見たのは人の形をした死神だ。関わった者は皆、死にいくのみ…」

 少女達が目にしたものは焼けた都で目撃した恐ろしい情景など比較にならない程、おぞましい惨劇だった。ただ目に焼きついたのは、自らを死神だと語った若者の、次々と人を切り刻む姿と、その怪しい程の笑顔、そして何より、錆び付いていたはずの剣が青白く輝き、触れる者全てを破壊していった様な感覚だった。

 周りの兵士の息遣いが全て消え、残るは少女とただその惨劇を見るしかなかった呉匡だけとなった。趙神はこの現場に似合わない不敵な笑顔を浮かべたまま、真っ直ぐに呉匡に向かい歩いてきた。呉匡は自分の股間から暖かい物が流れていることにさえ気付かず、ただ立ちすくんでいた。趙神は呉匡の前まで来ると青白く光る剣を彼の喉元に突きつけ、緩んだ口元のまま尋ねた。

 「洛陽で一番強い奴は今どこにいる?」


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