「そんなの知りません。軍のほとんどはもう長安に出立しました。残っているのは私の様な下っ端と、かり出された賊が東門にいるだけです。ど・どうか命だけは…」

 趙神はその言葉を聴き、何かを思い出した様に「チッ」と舌を鳴らした。何ら躊躇する事無く喉もとの剣を横に引き裂くと、呉匡は断末魔の悲鳴を上げることも許されず、白目を剥いて後ろに倒れた。すぐに後ろを振り返りその場を立ち去ろうとする趙神に向かい、またあの少女が口を開いた。

 「…悪魔…」

 趙神はまた足を一旦止め、振り返る事も無く、意地悪な顔で少女に口を開いた。

 「なるほど、悪魔か…その悪魔に助けを乞うたお前も、碌な死に方は出来ないと覚悟しておけ」

 趙神はその言葉を吐くと、また来た門を潜り、一目散に走り始めた。


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