「父さん、母さん、戒と二人で頑張って生きて行くからずっとずぅっと…見守っててね」

 蘭は寄せ集めて作った墓標に向かって手を合わせ、そう言って涙ぐんだ。常に気丈に振舞っている彼女が涙する事に戒は驚きを隠せずにいた。その戒はと言えば、正直両親が死んだという実感はなかった。ただ、興味があるのは、今自分の隣でぼうっとしているこの青年と、あの時二十人以上の賊を相手に目にも止まらぬ速さで次々と敵を斬り倒した男が同一人物なのか?という事。

 「なぁ趙さん。良かったら、剣術を教えてもらえないかなぁ」

 戒は蘭に聞こえない程度の声で、趙神にお願いをしてみた。

 「無理ですよ。僕が人に教えるだなんて…。」

 趙神も戒に気を使い、小さめの声で返事をした。すると蘭がようやく重い腰を上げ、二人の方を振り向いて、話を始めた。


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