「大体この町の人達はおかしいよね?旅人を歓迎しない町なんて栄えるはず無いもん…あっ…均君のことじゃないからね…」

 蘭は相変わらずの早口で、一気にまくし立てていた。趙神と戒は「また始まった」という程度でしたか見てないが、初めて目にした少年・均は彼らの目の前に座り、まるで自分が怒られているように下を向いていた。

 「蘭姉、もういいじゃん。こうして均君が受け入れてくれたんだから…」

 洛陽を出てから、幾度か賊などに襲われもしたが、命の危険を感じるようなこともなく、素直に逃げて西へと歩いてきた。ここは徐州に入って初めての町、瑯邪郡の陽都県。蘭がこの様に、愚痴をこぼすのには訳があった。三人がこの町に着いてからというもの、町を歩く者は誰一人おらず、逆に三人を見かけたら家の中に隠れ、訪ねても門を堅く閉ざしたままだった。宿屋を訪ねもしたが、満室を理由に断られ、町を彷徨っていたのだ。運良く話し掛けてくれた均という少年が快く受け入れてくれたお陰で何とか町の中での野宿だけは免れそうであった。


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