「長らくの城攻めで孫堅は痺れをきらしておった。
破竹の勢いを行く孫堅軍とはいえども、所詮は猪と野犬の集まりよ。
最後は天も見離したのだろう、落石にあって不様に逝ったわい。」
「おお、あなた様の策でしたか!
いやあそのご慧眼なる策によって大将が折られた我が軍はもう滅亡の一途を辿るでしょう!
私もこちらの幕下にぜひ末席を汚す形で参入させて頂きたいものですなぁ!
ハハハハ…」
桓楷の乾いた笑いが虚しく謁見の間にこだまする。
居並ぶ将兵らはただ仏頂面するばかりで、一気に場は白けたものとなった。
「桓伯緒よ。」
ついに玉座の劉表が口を開く。
それは天からの声にもさも似ていた。
神の声など聞いたことはないが、きっとこの世にあるならばこんな声だろう。
白けた空気が一気にぴんと張りを取り戻す。
「そなたはこの様なことを話すためにわざわざ使いに出されたのかね?」