劉表の口調に桓楷を責めるようなところは全く微塵も見られなかった。
乾いた土に水がゆっくりと染み渡るような、
そんな穏やかささえ感じてしまう。

これが漢室の血を引く劉家の風格か。
ごくりと喉を鳴らせて、
桓楷は再び拱手の型をとり深々と頭を下げる。

「それでは恐れながら…
この度旧知の仲である殿下と我が主、孫文台が刄を交えることとなったのは実に残念なことにございます。

我らは主を失い、そして殿下は黄祖という二つと無い臣を捕われました。
しかし殿下に忠誠を誓った黄祖を我々が用いることは出来ず、斬ってその才を散らすばかり。」

組んだ手の間から、玉座の方を伺ってみる。

穏やかな両の目をたたえた劉表。
対照的に、カイ良が虎視眈眈と反論の隙を伺っているのが見て取れた。


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