「我々の君主孫文台の遺骸もそうです。
殿下の元に置いていても何の益にもなりませんが、
我々にとっては屍であっても大切な君主なのです。」
来るか。来るか。
奴の言葉が来るか。
「このままでは不幸なばかりです。
そこで、黄祖と我が主孫文台の屍を交換して頂きたい。
その旨を申し上げに参りました。」
「あいや待たれい!」
来た!
ゴホン、と咳払いをして
カイ良はイガらっぽい己の声の調子を整える。
「今や江東の虎は亡く、その地は君主不在。
少数の豪族がひしめき合うその中では、幼いご子息も江東を統べることは出来ぬであろう。
ならば我が荊州王が旧友たる孫大守の遺志を継ぎ、
江東に仁の政を敷くというのが最も望ましい形なのではないかね?
その暁には孫大守の葬儀を盛大に行い、立派な諡号を送るとしよう。
したらば、そなたも我が幕下に入ることが叶うであろう?」