「子柔よ。
わしはそなたに独断の権を与えた覚えは無いぞ。」
「しかし殿下…!」
君主の言葉は絶対である。劉表は何も言う事無く
じっ、と視線をカイ良へ注ぎ、その口を閉じさせる。
劉表のことを意気のないじじいだと、一体誰が言ったのだ?
「子柔、そなたは謀士として物を言うのであろうが、わしは荊州を治める君主としてここに在るのだ。
黄祖をここで失っては仁に反する。
桓楷よ、文台の遺体と黄祖の交換の旨、しかと承諾したぞ。」
ざわわっ、と謁見の間全体の空気が震えた。
一瞬劉表が何を言ったのか理解できなくて、桓楷は慌てて返事をする。
「は…ハハッ!
誠に有り難いことにございます!」
声が裏返ってしまったのを少々恥ずかしく思いながら、腰を直角に曲げて包拳した。