己の鼓動が、頭に直接響いた。
ドクン。
手のひらで布地を掴む。
ドクン。
掴んだ布を少し持ち上げる。
ドクン。
そのままゆっくり、右に布を引く。
息が止まった。
体の中心の熱い血潮が、
一瞬にして無音のまま凍結してしまった。
見開かれた瞳。
今の孫策に、言葉を紡ぎだすのは不可能だった。
「殿…」
「なんと痛ましいお姿に…」
程普は肩を震わせる。
韓当は目頭を押さえる。
黄蓋はもう覚悟してあった。
殿がどんな姿で戻ってきても、自分は若を支えると。
「若…」
眉根に皺を寄せて、黄蓋はうつむく孫策の顔を覗き込む。